おもしろかった本『0歳からはじまる オランダの性教育』

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皆さまこんにちは!オランダの大学院に社会人留学、その後現地で就職→日本に帰国して転職したChisakiです。

「オランダに住んでました!」と言うと「オランダってどんな国なの?教育は?政治は?」というように興味を持って聞いてくださる方が多いです。が、そういうふうに聞かれるたび、自分は3年間オランダに住んでいた割にオランダのことを全然知らないと気付かされます。それで、帰国した今だからこそ改めてオランダのことをちゃんと勉強しようと思って図書館をのぞいてみると、こんなおもしろい本に出会いました。

0歳からはじまるオランダの性教育(リヒテルズ直子著)

リヒテルズ直子さんはオランダ在住の教育学・社会学者で、オランダ各地の学校をまわってリサーチをしながらオランダ教育に関するたくさんの著書を出されています。

それでは、本書の特におもしろかった点を挙げていきます。

オランダではモーニングアフターピルがドラッグストアで誰でも気軽に買える

日本でも昨年になって一部の薬局で試験販売が始まったモーニングアフターピルですが、それでも、買える場所が限られている、16歳以上でないと買えない、値段が高い、などのバリアがまだまだあります。緊急の時にすぐ欲しいものなのに…。対してオランダでは、ドラッグストアで絆創膏やビタミン剤などと同じように並んでいて誰でも気軽に買えるという記述がありました。値段も調べてみると10〜20ユーロ程度とのこと。

若者が一時的な興味本位の行動の結果望まない妊娠をしてしまった場合に、その「失敗」が後の人生に大きな負担となることを避けるための救済手段、緊急手段としてピルの存在が広く認知されている結果ではないか、と筆者は書いています。自分が望んでもいない性被害から起こりうる妊娠の場合は言うまでもなく、緊急手段がいかにアクセスしやすいところにあるかというのはとても大切なことです。

オランダでは子どもが学ぶべき性に関する知識がカリキュラム化されている

オランダでは2012年に初等・中等教育で性教育が義務化されました。それにともなって、国立カリキュラム研究所が年齢段階ごとに子どもが学ぶべき性に関する知識やスキルを細かくリスト化しました。そのリストに沿って先生たちは性教育の授業を行います。

カリキュラムがあるといっても、決まった教科書があって先生が一方的に知識を伝えて、というようなものではありません。先生と生徒が円になって座り、みんなで議論やゲームをしたり、動画を見たり、実際に生理用品や避妊具を手に取ってみたり、何かをクリエイト(お話を創作する、手紙を書くなど)したり、といった活動を通して学習が進んでいくそうです。それらの活動は、先生自身が上記のリストに沿って準備することもあれば、国が提供する教材も豊富にあるようです。

そのリストがこの本にも付録として載っていますが、圧巻の内容。例えば、0〜4歳の目標としてリスト化されている知識・スキルはこんな感じです。(一部抜粋)

身体的発達からだの部位の名称を言える。
男の子と女の子の違いを言える。
自分が成長する、変化するということを言える。
親密な関係様々な種類の恋愛関係を言い表せる(男性と女性、男性と男性、女性と女性、など)。
自分にとって大切な人について言葉で表せる。
生殖・家族・避妊赤ちゃんがどこからくるかをおよそ言い表せる。
自分の家族の構成を言える。
セクシュアリティ愛情表現としての身体的な触れ合いを認識できる。
快い接触と不快な接触を認識できる。
誰が自分のからだに触れてもよいか、自分は他の人のからだのどの部分に触れてよいかを言い表せる。

いかがでしょうか?この年齢にしてはかなり高度なものも含まれているなぁというのが私の感想です。特に、「快と不快」「からだの中で触れても良い場所」を小さい頃からきちんと認識することはものすごく大切です。それから、目標として「〜がわかる」という言い方ではなく「言葉で言い表せる」としていることが印象的で、頭でわかるだけでなくしっかり自分の言葉で表現できて初めて「学んだ」という捉え方になるんだなと思いました。

ここからもっと年齢が上になってくると、

  • 「メディア上の理想的な身体イメージと現実を区別できる」(12-15歳)
  • 「恋愛関係を快いものとして維持するにはどんなことができるかを説明できる」(12-15歳)
  • 「自分に相応しい避妊方法を選ぶことの重要性を説明できる」(15-18歳)
  • 「セクシュアリティに関する自分の価値観や道徳観を意識している」(15-18歳)

というようにもっと具体的な話になっていきます。

「ノー」を言うこと、ボーダーラインを引くことの重要性

オランダの性教育では、どんなに小さな子どもでも自分にとって不快なことに対してはっきりと「ノー」を言えるようになることを非常に重視しています。これは先ほどの「快と不快を認識する」などの項目とも重なりますが、子どもが性犯罪の被害者になることを防ぐ意味でも非常に重要なことです。

ある子ども用の絵本教材では、「ノー」と言いにくい状況、例えば近所のおばあちゃんに過剰に頬擦りやキスをされた時などでも、それを自分が不快に思うならはっきりと「ノー」と言っていいんだよということを伝えています。

また、ある中等学校で実践された授業では、好意を持っている相手との出会いから性交渉に至るまでの細かいステップを示し「自分がどこまで受け入れるのか」を話し合うというものがあります。この活動には重要な点が2つあって、ひとつは「自分のボーダーラインを明確に意識する」ということ、そしてもうひとつは「一人ひとりのボーダーラインは違っている」ということを理解し受け入れるというものです。

さらに、大人(性教育の授業をする先生)のボーダーラインを守るための指針もしっかり言語化されていて、ある性教育教材用の先生用マニュアルには

  • 自分自身の境界線と生徒同士の間の境界線を守ること。生徒の行き過ぎた態度や言動に対してはすぐに反応し、やめさせる。
  • 教員自身の性生活について聞いてくる生徒の問いに答える必要はない。彼らはもともとそういうことを聞きたいのではなく、挑発やからかいの気持ちからそうしているだけである。
  • 授業のはじめに、答えることのできる質問とできない質問について生徒たちと約束をしておく。そうすることで生徒が行き過ぎた個人的な質問をしてきた時も、はじめにどんな約束をしていたかをリマインドさせることができる。

というようなことが書かれているそうです。性教育は大切なこととは言え、誰もが堂々と自信を持って授業ができるわけではありませんが、このように心得がはっきりと言語化されていたら心の拠り所になりそうですよね。

というわけで、ここに挙げたのは「0歳からはじまるオランダの性教育」のなかで私が面白いと思った点のほんの一部ですが、何かの参考になれば嬉しいです。教育に関わる方や子育て中の方にとってもおすすめなのでぜひ一度読んでみてください!

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