洋楽のカテゴリでは、英語教師というバックグラウンドを生かし、英語の曲を授業でこんな風に使ってみたいなと思うポイントをご紹介しています。
今回はTHE BLACK EYED PEASのWhere Is the Love?です。サビ以外はラップです。だからイカつい曲なのかと思いきや…現在の世界情勢に対する警告と平和への願い、そして人々への愛がこもった楽曲なのです。この曲は2003年のヒット曲で、アメリカ同時多発テロとそれに対する報復など、さまざまな不条理に対するメッセージだと言われています。
ポイント①ラップの部分をどう使うか?
まずはイントロのラップを見てみましょう。
―ここから引用 BLACK EYED PEAS ”Where Is the Love?”より
What’s wrong with the world, mama
世界はどうなってしまったんだ
People livin’ like they ain’t got no mamas
みんな母親がいないような生活を送ってる
I think the whole world addicted to the drama
世界中がドラマに夢中
Only attracted to things that’ll bring you trauma
でもトラウマになるようなことばかり
Overseas, yeah, we try to stop terrorism
海を越えて テロを止めようとしている俺たち
But we still got terrorists here livin’
でもここにこそテロはある
In the USA, the big CIA
アメリカ、偉大なCIA、
The Bloods and The Crips and the KKK
ギャング集団、そして白人団体に
―引用終わり
ラップの部分を授業でどんなふうに使えるかなと考えてみると、いろいろとアイディアが浮かんできます。
例えば、歌詞のディクテーション。ラップなのでスピードは速いですが、いくつかはっきりと聞き取れる単語があります。3行目のdramaとか下から2行目のUSAとか。そういう語を穴抜きにして、日本語訳も見られる状態で、曲を聞きながら書き込んでいきます。そうすると、ブワーっと英語をまくしたてているだけに思えるラップが、れっきとしたアーティストの「言葉」であるということがわかってきます。ラップの英語を聞き取れたと思うと生徒たちも嬉しいですよね。
穴埋めが完成したら、各センテンスの「韻」にも注目したいところです。わかりやすいのは3,4行目のdramaとtraumaですね。英語の歌は韻を踏むことがルールのようになっていて、これのおかげで心地よいリズムが生まれています。どことどこで韻を踏んでいるかをみつけていくのも楽しいですね。
ラップを歌うことにももちろんチャレンジしたいです。授業中にみんなで歌うならUSA, CIA, KKK!あたりをリズムに乗せて元気に言えたらじゅうぶんだと思います(笑)
ポイント②キリスト教の世界観を知る
サビの歌詞はキリスト教の世界観を知るのに最適です。
―ここから引用 BLACK EYED PEAS ”Where Is the Love?”より(訳は筆者)
People killin’, people dyin’
人々は殺し合い そして死んでゆく
Children hurt and you hear them cryin’
傷つけられる子ども達 泣き声が聞こえるだろう
Can you practice what you preach?
神の教えを守っているのか?
Or would you turn the other cheek?
寛容の心を持っているのか?
Father, Father, Father help us
神様 助けてください
Send some guidance from above
天から啓示を与えてください
‘Cause people got me, got me questionin’
人々を見ていると考えずにはいられない
Where is the love
愛はどこにあるのか と
―引用終わり
まず3行目のpreachは、「説教する」という意味の動詞です。教会で神父さんや牧師さんがしてくださるお話ですね。説教の中身は神様の教えなので、what you preachを「神の教え」と訳しました。”you”は、「あなた」というよりは「人々全般」と解釈し、「いつもみんなえらそうに言ってるけど、どうなの?」みたいな感じかなと思います
次に4行目turn the other cheekという表現です。これは聖書に出てくる文章から来ていて、「誰かがあなたの右頬を打つならもう片方の頬も差し出しなさい」つまり、「不当な扱いに対して反発せずに相手を許す」というような意味です。ここではwould you turn the other cheek?という文で、他者への寛容の心を持っているか?ということを問いかけているのだと思います。
そして最後にFatherという語。「お父さん」と訳してしまいがちですが、「神父様」や「神様」という意味もあります。
歌を通して普段触れることのない世界を知ることが出来るのは楽しいですね。
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